トール(現:JPロジスティクス)の残業代問題とは何か
- 広島県本部 日本労働評議会
- 2016年7月7日
- 読了時間: 3分
更新日:3月4日
労評弁護団・指宿昭一弁護士の解説から読み解く
トールエクスプレスジャパン(以下「トール」)で働く労働者の間で、長年にわたり「残業代が正しく支払われていないのではないか」という疑問が広がってきました。 この問題を法的に整理すると、トールの賃金規則には大きく 2つの問題点 が存在します。

1. 通常の賃金に対する割増賃金(時間外手当A)が実質的に支払われていない
トールでは、通常の賃金(職務給など)に対する残業代を「時間外手当A」と呼んでいます。 賃金明細には「時間外手当A」が記載されており、形式上は支払われているように見えます。
しかし、実際には 能率手当の計算式の中で時間外手当Aが差し引かれる仕組み になっています。
■ 能率手当の計算式
[ 能率手当 = 賃金対象額 - 時間外手当A ]
つまり、時間外手当Aを支払ったとしても、同じ金額を能率手当から差し引くため、賃金総額は変わらない のです。
■ 結果として起きていること
時間外手当Aは「払ったことにしているだけ」
実質的には残業代が支払われていない
労基法37条1項の趣旨に反する脱法行為
このような手法は、タクシー・トラック業界でしばしば見られますが、裁判所は厳しく判断しています。
■ 国際自動車(KM)事件の判決
東京地裁・東京高裁は、
「形式上支払っていても、実質的に支払っていない場合は公序良俗違反で無効」 と判断し、会社に未払残業代の支払いを命じました。
トールの仕組みも同じ構造であるため、同様の判断が妥当だと考えられます。
2. 能率給に対する割増賃金(時間外手当B)が不足している
能率給に対する残業代が「時間外手当B」です。
しかし、能率手当の金額自体が [ 賃金対象額 - 時間外手当A ] と不当に減らされているため、そこから計算される時間外手当Bも 本来より少なくなる 仕組みになっています。
もし「-時間外手当A」の控除が無効となれば、
能率手当は本来の「賃金対象額」になる
それに応じて時間外手当Bも増える
これまで支払われてきた時間外手当Bは不足している という結論になります。
3. トール広島営業所の労働者が訴訟を提起
2016年6月14日、トール広島営業所の労働者たちは労評トール広島分会を結成し、 9名の原告が大阪地裁に未払賃金を請求する訴訟を提起 しました。
この動きは関西テレビ、毎日新聞、産経新聞などでも報道され、社会的な注目を集めています。
4. 全国のトール労働者へ ― 未払残業代を取り戻すために
トールの賃金規則は、
通常賃金の残業代(時間外手当A)
能率給の残業代(時間外手当B) の両方で不払いが生じる構造になっています。
これは労働基準法の趣旨に反し、裁判例から見ても違法性が強いといえます。
関心のある方は、 労評(日本労働評議会) または 暁法律事務所 に相談することができます。ぜひ、お気軽にご連絡ください。


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